初心者向け

AI 導入は、手作業から始める

「とりあえず AI で何か作ろう」から始めると、AI に向かない仕事まで AI に任せてしまいます。

このサイトの自動化15本は、どれも「人が手でやっていること」から始めました。すると、5本は AI をまったく使わず、AI を使った10本でも、AI の仕事は「文章を読む・書く・訳す」に限られました。

AI に日付や計算を任せたときに実際に起きたことと、始める前に決める4つのことを書きます。

先に結論を書きます。AI 導入は、「AI で何をするか」からではなく、「人が手で何をしているか」から始めます。 そうすると、AI が要らない部分と、AI に任せてはいけない部分が、先に見えます。

約29秒の予告編(音声あり。音声:VOICEVOX:雨晴はう)

ここに書くのは、このサイトで配っている自動化の実例15本を作ったときのことです。AI は Claude Haiku 4.5 で、お店や会社のデータは、検証用に作った架空のものです。会社への導入の成功・失敗を数えたものではありません。

「AI で何をするか」から始めると、何が起きるか

同じ仕事(お客様の問い合わせメールに、返信の下書きを作る)を、2つの作り方で比べたことがあります(AI Agent に任せるか、手順を組むか)。

  • 手順を組んだ版:「仕分ける → 在庫や空き枠を表で調べる → 下書きを書く」を、人が決めた順に流す。AI は仕分けと文章だけ
  • AI Agent の版:道具(在庫を調べる、下書きを作る、など)を渡して、何をどの順でするかも AI に任せる

同じモデル・同じデータで、AI Agent の版は、費用が約3倍で、空き枠があるお客様を4回中3回断り、来店できない日を「予約できます」と書いた回もありました。

「AI にできるだけ任せる」ほど、良くなるとは限りません。この仕事では、任せた分だけ崩れました。

手作業から始めると、AI が要らない部分が見える

このサイトの実例は、どれも「人が手でやっていること」(記事の冒頭の Before)を書き出すところから作っています。書き出してから、手順ごとに「ここは AI でないとできないか」を決めました。結果は次のとおりです。

実例 AI がすること AI を使わず、コードがすること
外貨決済の為替チェック 使わない 為替レートの取得、上乗せの割合の計算
自動化の診断書 使わない 認証の確認、実行回数の集計
共通エラー通知 使わない 失敗の知らせを1本にまとめる
取りこぼさない取得 使わない 成功と失敗を分けて取る
定期取得・集計・通知 使わない 取得、集計、本文の組み立て
領収書とカード明細の突合 PDF を読んで項目に分ける 金額の検算、明細との突き合わせ
Chatwork の記録をシートへ 書き込みを項目に分ける 金額の検算、日付の計算
引用つきの議事録 文字起こしを要約する 引用が本当にあるかの照合
法令の改正ウォッチ 変わった条文を説明する 変わった文字を出す、説明の照合
ページ速度の週次チェック 直し方を書く 測る、合否の判定
LINE 多言語の窓口 翻訳する 訳文の数字の検算
LINE×Slack 問い合わせ対応 答えが決まる質問に返事を書く AI に答えさせるかどうかの分岐
LINE の返信を承認して送る 仕分けと、返信案を書く 在庫・空き枠を表で調べる(送るのは人)
在庫・来店メールの返信下書き 仕分けと、下書きを書く 在庫・空き枠を表で調べる(送るのは人)
LINE×Slack 学習する窓口 似た過去の返信を探す、返信案を書く、名前などを伏せる 番号・メールを伏せる(正規表現)、覚えるかどうかは担当者の #learn(送るのは人)

15本のうち5本は、AI をまったく使っていません。 どれも、計算、集計、決まった手順の繰り返しで、答えが1つに決まる仕事です。AI を使うと、毎回同じ答えが返る保証がなくなり、費用もかかります。

AI を使った10本でも、AI の仕事は「文章を読む・書く・訳す」に限っています。 数字の計算、日付、表の検索、送るかどうかの判断は、AI の外(コードや人)でやっています。

AI に日付や計算を任せたら、何が起きたか

「AI の外でやる」と決めたのは、試して崩れたからです。

AI は、今日の日付を知りません。 来店の相談メールから日付を取り出すとき、今日の日付を AI に渡さずに試したら、こうなりました(2026年10月の検証です。在庫・来店メールの自動返信を作った記録)。

メールの表現 AI が取り出した日付 正しい日付
今度の日曜日 2025-01-12 2026-10-04
10月7日の水曜日 2024-10-07 2026-10-07
今週の土曜日 土曜日(日付ですらない) 2026-10-03

そこで、Chatwork の実例では、AI には「昨日」「先週金曜」という言葉を取り出すだけをさせ、それが何日かは、書き込んだ日からコードが計算しています。

金額も同じです。 領収書の実例では、AI が金額を数字ではなく「¥3,200」という文字で返したことがあります。コードが「金額は PDF の文字にあるか」「明細と税の合計は合うか」を確かめているので、このときは「要確認」で止まり、間違いのまま表に入ることはありませんでした。

始める前に決める4つのこと

ここまでの実例から、私は作り始める前に、次の4つを順に決めています。実測から導いた決まりではなく、私のやり方です。

  1. 人が手でやっていることを、手順ごとに書き出す。 「領収書を開く → 店名・日付・金額を読む → 表に打ち込む → 月末に明細と見比べる」のように。この時点では、AI のことは考えません
  2. それでも人に残すことを、先に決める。 お客様への送信、支払い、例外の判断など。ここを後回しにすると、「全部 AI に任せる」作りになりがちです(送信を AI に任せなかった理由は、AI に「送る」を任せない設計に書きました)
  3. 答えが1つに決まる手順は、AI を使わない。 計算、日付、表の検索、集計。残った「文章を読む・書く」手順だけを、AI の候補にします
  4. わなを仕込んだデータで試す。 領収書の実例では、わざと計算を合わなくした請求書や、文字のない画像だけの PDF を混ぜた12枚で試しました。普通のデータで数回動かしただけでは、AI の崩れ方は見えません

確認していないこと

  • 会社での導入の結果。 ここにあるのは、私が作って検証用のデータで試した実例です。実際の会社で、何か月も使ったときにどうなるかは分かりません
  • 時間がどれだけ減るか。 どの実例も、作業時間の短縮は測っていません
  • ほかのモデル。 どの例も Claude Haiku 4.5 です。日付や計算を、もっと大きなモデルに任せたときの結果は試していません

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