中級向け
エージェントハーネスとは
エージェントハーネスは、AI モデルの外側で、道具・手順・許可・やりとりの記録を受け持つ仕組みです。Anthropic は、Claude Code を動かしている仕組みをこう呼んでいます。
同じモデル(Claude Haiku 4.5)・同じデータで、n8n の「手順を組む」と「AI Agent ノード」を比べたら、ハーネスが違うだけで、費用は約3倍になり、空き枠があるお客様を断る回も出ました。
ハーネスが毎回送っているもの、渡している権限、業務でどれを選ぶかの順番を書きます。
公開
先に結論を書きます。AI エージェントの出来は、モデルだけでは決まりません。モデルの周りの仕組み(ハーネス)を変えただけで、同じモデルでも、費用も正確さも変わりました。 業務で AI エージェントを選ぶときは、モデルより先に、ハーネスを見ます。
この記事では、資料を読んだだけのこと(言葉の定義)と、自分で動かして測ったこと(費用と正確さ)を、分けて書きます。
エージェントハーネスとは:モデルの外側の仕組み
ここは、公式の資料を読んだだけの内容です。
Anthropic は、Claude Code を動かしている仕組みを「agent harness」(エージェントハーネス)と呼んでいます。Claude Code の SDK を Claude Agent SDK に改名したときの公式ブログに、「Claude Code を動かしているエージェントハーネスは、ほかの種類のエージェントも動かせる」という文があります(Building agents with the Claude Agent SDK、2025年9月29日。2026年10月17日に読みました)。
同じブログでは、エージェントの動きを「情報を集める → 行動する → 結果を確かめる → 繰り返す」というループとして説明しています。そして、Agent SDK の公式ドキュメントには、Claude Code から受け継いでいる機能として、次のものが並んでいます(Agent SDK overview、同日に読みました)。
- 組み込みの道具(ファイルの読み書き、コマンドの実行、Web の検索)
- MCP(外の道具やデータにつなぐ仕組み)
- 許可(どの道具を自動で動かし、どれに承認を求めるか)
- セッション(やりとりの記録を持ち越す)
- フック、サブエージェント、スキルなど
まとめると、モデルは「考えて、文章を書く」部分で、ハーネスはそれ以外のすべてです。どの道具を渡すか、何回まで繰り返すか、何を許可するか、これまでのやりとりをどう渡すか。解説記事では「エージェント = モデル + ハーネス」という式もよく使われます。
n8n で AI を動かすとき、ハーネスは3つの形がある
このサイトで使ってきた作り方を、ハーネスの見方で並べると、こうなります。
| 作り方 | ハーネス(モデルの外側)を決めているのは | AI がすること |
|---|---|---|
| 手順を組む(n8n のワークフロー) | 人。n8n の手順と分岐が、順番と道具を決める | 決められた1か所で、文章を読む・書く |
| AI Agent ノード(n8n の部品) | n8n の AI Agent ノード。道具の一覧、繰り返しの上限、記憶を持つ | どの道具を、どの順で使うかを自分で決める |
| Claude Code + n8n の MCP | Claude Code。n8n は、Claude Code から使う道具の1つ | ワークフローを作る、動かす、結果を読む |
同じモデルでも、ハーネスで結果が変わった(実測)
ここからは、自分で動かして測った内容です。
お客様の問い合わせメール7通に返信の下書きを作る仕事を、「手順を組む」と「AI Agent ノード」で比べました。モデル(Claude Haiku 4.5)、在庫と来店枠のデータ、返信のルールは同じです(AI Agent に任せるか、手順を組むか)。
| 7通あたり | 手順を組む | AI Agent ノード |
|---|---|---|
| モデルの呼び出し | 19回 | 20〜21回 |
| 入力トークン | 11,410 | 38,476〜40,999 |
| 1通あたりの費用(1ドル150円) | 約0.4円 | 約1.2円 |
| 空き枠があるお客様を断った | 6回中0回 | 4回中3回 |
| 来店できない日を「予約できます」と書いた | 6回中0回 | 4回中1回 |
呼び出しの回数は、ほとんど変わりません。違うのは、1回の呼び出しで、ハーネスがモデルに送っている量です。
ハーネスが毎回、モデルに送っているもの(実測)
n8n の AI Agent ノードで、何が送られているかを1回ずつ測りました(n8n AI Agent ノードの使い方)。
- 道具を1つつなぐだけで、呼び出しのたびに578トークン増えた。 道具の説明と、道具を使わせるための指示が、毎回付く
- 道具を呼ぶたびに、それまでのやりとりを全部送り直す。 10回繰り返すと、入力の合計は1回目の約19倍(11,494トークン)になった
- 繰り返しの上限(初期値は10回)に当たると、エラーで止まり、途中経過は返ってこない。 それまでの費用は払い済み
- 道具をつなぎ忘れると、AI は「道具を呼んだつもりの文字列」を書いて、成功扱いで終わった(1回だけの観察)
ハーネスが渡している権限
ハーネスは、AI に「何をしてよいか」も決めています。
Claude Code から、VPS の上の n8n に MCP でつないだとき、n8n の側には51個の道具が並んでいました。ワークフローの作成・実行のほかに、認証情報の一覧(list_credentials)や、コミュニティノードのインストール(install_community_node)もありました。許可に使ったのは n8n のオーナーのアカウントで、Claude Code は、そのアカウントでできることを、MCP を通してできるものとして扱う必要があります(VPS の n8n に Claude Code から MCP でつなぐ。使ったのは51個のうち8個だけで、ほかは試していません)。
Claude Code の側には、道具ごとに「自動で動かす」「承認を求める」を決める許可の仕組みがあります(公式ドキュメントを読んだだけで、この記事のために設定を比べてはいません)。モデルが同じでも、どの道具を渡し、どれに人の承認を挟むかで、起こりうる事故の大きさが変わります。
業務で選ぶときの順番
ここまでのことから、私は次の順で選んでいます。実測から導いた決まりではなく、私のやり方です。
- 手順を書き出せる仕事は、手順を組む。 「在庫の質問なら在庫を調べて答える」のように分かれ道が決まっているなら、その判断を毎回 AI にさせる理由はありません。安くて、正確でした
- 何をどの順に調べるかを、前もって書き出せない仕事だけ、AI Agent に任せる。 そのときは、繰り返しの上限を決め、途中経過を残す設定にして、道具は必要なものだけにします
- Claude Code は、作るための道具として使う。 このサイトの実例は、Claude Code で n8n のワークフローを作り、MCP で動かして結果を確かめました。毎日動く本番は、AI Agent ではなく、手順を組んだワークフローです
確認していないこと
- Claude Code のハーネスの中身。 Claude Code が1回の呼び出しで何をどれだけ送っているかは、測っていません。測ったのは n8n の AI Agent ノードだけです
- Claude Agent SDK と Managed Agents。 公式の資料を読んだだけで、使っていません
- ほかのモデル。 比べたのは Claude Haiku 4.5 だけです。大きなモデルなら、AI Agent の正確さは変わるかもしれません
- 言葉の定義。 「エージェントハーネス」は新しい言葉で、製品全体(Claude Code など)を指すことも、評価のための仕組みを指すこともあります。この記事は、Anthropic の使い方に合わせました
次に読む
- 同じモデルで2つの作り方を比べた詳しい記録は AI Agent に任せるか、手順を組むか
- AI Agent ノードの設定と落とし穴は n8n AI Agent ノードの使い方
- Claude Code と n8n をつなぐ手順は Claude Code から n8n を操作する
- AI に任せる範囲の決め方は AI に「送る」を任せない設計 と AI 導入は、手作業から始める